やっぱり「華麗なる」タイトルがいい

   

翻訳文学のタイトルには、びっくりするような訳があります。例えば、サラ・パレツキーの小説「Killing Orders」の邦題は「センチメンタル・シカゴ」。そりゃないよ~、と言いたくなるようなタイトルです。いったいなんで、「センチメンタル」なのでしょう?

 

逆に、素晴らしいタイトルもたくさんあります。サリンジャーの「The Catcher in the Rye」は野崎孝さんが「ライ麦畑でつかまえて」と訳しました。チャンドラーの「The Long Goodbye」を「長いお別れ」とした清水俊二さんの訳。どちらも、ほれぼれします。

 

「華麗なるギャツビー」も素晴らしいタイトルだと思いますが、少し違和感も覚えます。フィッツジェラルドの原題は「The Great Gatsby」。「great」には「華麗」という意味はないし、主人公ギャツビーの「華麗な」生活が主題の作品でもないので奇妙です。野崎孝さんの訳ですが、ご本人が後に「グレートギャツビー」「偉大なギャツビー」と改題もされています。しっくりこない感じを抱かれていたのかもしれません。

 

それでも、とても印象に残るしカッコいい。ヘンなのに素敵なタイトル。ひかれます。

 

この作品、5回目の映画化がされました。タイトルは「華麗なるギャツビー」。「グレート」でも「偉大な」でもありません。先日観ましたが、すごく良かったです。原作からかなり離れてしまった印象はあるものの、パーティ場面や自動車で疾走するシーンが、現代的な演出でとても華やか。原作に忠実だった過去の映画に比べて、ずっと「華麗」です。

 

実は今までに、村上春樹さん訳のものも含めて4、5回読んでいるのですが、いまひとつ面白さがわかりませんでした。「アメリカ文学を代表する」といわれる名作なのに。

 

今回の映画を観て、ようやくわかった気がします。

 -ライター水野秀次の「時代を斬る」コラム

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